2009年3月4日水曜日

これでいいのか経済産業省の「日本型買取制度」

~経済産業省の「日本型買取制度」についての見解~

再生可能エネルギー大幅普及の仕組みにはほど遠い 

浅岡美恵 気候ネットワーク代表

経済産業省は2月24日、太陽光発電について、電力事業者に余剰電力について 10年程度、現状の2倍程度で買い取りを義務づけるという、日本独特の体系による買取制度の導入を発表した。
また、エネルギー供給事業者による非化石エネルギーの利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(仮称)の中で、経済産業大臣による事業者の「判断の基準」となるべき事項として定める方針も明らかになった。
これは、これまで低い目標数値の下で RPS方式に固執してきたために日本の再生可能エネルギー導入政策が大きく遅れてきたことに批判が強まる中、修正を余儀なくされた結果である。
しかし、この「日本型買取制度」は、日本の低炭素社会経済の実現のため求められる再生可能エネルギーの大幅導入策とは呼べない、不十分なものである。第1に、経済産業大臣が定める「判断基準」によって電力事業者の買取義務の実体が定められるという法構造は、国民参加の下に再生可能エネルギーの飛躍的拡大を図る目的に反するものであり、電気事業者の買取義務づけという性格上の適正な措置とはいえない。NGOはドイツなどで実績をあげている発電電力の長期間固定価格買取制度を踏まえた提案をしてきたところであり、MAKE the RULEキャンペーンにおいても、この仕組みの導入を中長期の大幅削減の目標達成のための重要な政策として位置づけた気候保護法の提案をしている。
先般、環境省からも、再生可能エネルギー拡大への買取制度導入提案が出されている。まず制度設計において、政府全体での連携のもとに、国民に開かれた場において、再生可能エネルギーを飛躍的に拡大し、経済再生にも貢献する仕組みを構築し、国民がその是非を判断できる具体的制度を盛り込んだ法案を国会で審議し、制定後の適切な運用を図ることが不可欠である。第2に、今回の日本型買取制度提案は、再生可能エネルギー供給を柱に据えるための制度にはほど遠い。太陽光発電のみが対象で、風力やバイオマスなどの海外での再生可能エネルギー拡大の中核をなす他の再生可能エネルギーは含まれていない。
また、太陽光発電についても自家消費の余剰電力についてのみであり、期間も10年に限って現状の2倍程度の価格で買い取るもので、それも将来的に逓減させるという。ドイツなどでの普及の飛躍的拡大に成功した要因は、設置者が10年程度で十分に投資を回収できる目途が経っている仕組みであるからである。自家消費量は家庭の省エネ努力というより世帯の事情によって異なる上、仮に発電量の半分が買取対象となるとしても3kW程度の設備では10年程度で到底投資回収ができないことは争いがない。ドイツの買取価格逓減制度は、十分な早期の投資回収を確保したうえで、早期の導入を誘引する仕組みである。 
以上の通り、今回、経済産業省が発表した「日本型買取制度」は、再生可能エネルギーの飛躍的普及拡大のための固定価格買取制度と評価することはできない。真に実効性のある再生可能エネルギーの大幅普及政策として、①発電電力の全量買取を電力会社に義務づけ、②買取価格は10年程度で減価償却できる価格設定とし、③RPS制度を撤廃して、太陽光発電だけでなく全ての再生可能エネルギーに対して実施することを確保するべきである。
私たちは引き続き、MAKE theRULEキャンペーンを通じ、実効性ある政策の早期導入を強く求めていく。

問合せ:気候ネットワーク[京都]TEL:075-254-1011、FAX:075-254-1012 
E-mail: kyoto@kikonet.org
[東京]TEL:03-3263-9210、FAX:03-3263-9463 
E-mail: tokyo@kikonet.org
======================================
気候ネットワーク 京都事務所京都市中京区高倉通り四条上る高倉ビル305
TEL 075-254-1011 FAX 075-254-1012
kyoto@kikonet.org  
http://www.kikonet.org/
MAKE the RULE 新しいル~ルで、地球をク~ルに。
http://www.maketherule.jp/